リスクを知って正しく対策
気持ちよく寝ているのに、突然、ふくらはぎに「ピキーン」と激痛が走る「こむら返り。あまりの痛みで動くこともできず、不安の中で治まるのをじっと待つだけ…。対策するには、まずは敵を知ることから。こむら返りが、なぜ起こるのか原因を探ってみましょう。
ふだん私たちは歩いたり運動したりするとき、足の筋肉を自分の意志で動かしています。ところが、自分の意志に関係なく、足の筋肉が突然けいれんを起こすことがあります。いわゆる「足がつる」という状態です。
通常、足を動かそうとする時は脳から筋肉へ指令が出ます。しかし、脳からの指令がないのに、勝手に神経が筋肉を動かそうとして、縮んだままになってしまう、ということ。
こむら返りは、主にふくらはぎの筋肉が異常に縮んで、けいれんしてしまう状態です。ちなみに、こむら返りの「こむら」とはふくらはぎのことで、実際ふくらはぎに多く生じますが、足の裏や指、太もも、胸など、体中いたるところで起こります。
就寝中や運動中に発症することが多く、妊娠中や加齢によっても起きやすくなります。肉離れやひどい筋肉痛のような、とても強い痛みがありますが、ほとんどの場合、数分間でおさまります。
最大の原因はマグネシウム不足
いちばんの原因は、ミネラルバランスの乱れにあります。ミネラルの中でも、おもにマグネシウムとカルシウム、カリウムが関係しますが、特に重要なのがマグネシウム。
カルシウムとカリウムは、筋肉の収縮や神経の伝達をスムーズにする働きがありますが、この2つのミネラルを調整しているのが、マグネシウムなのです。
筋肉は過剰に伸びたり、縮んだりすると、負担がかかって痛みがでます。それを防ぐために、2つの機能が働いています。伸びすぎを防ぐ筋紡錘(きんぼうすい)、縮みすぎを防ぐ腱紡錘(けんぼうすい)です。
2つのうちの腱紡錘の働きが弱まると、筋肉が異常に縮んで、けいれんが起こります。この腱紡錘の働きが弱まってしまう要因がマグネシウム不足なのです。
また、血流が悪いと筋肉に栄養が届かず誤作動を起こしてしまいますが、マグネシウムには血流を良くする働きもあります。つまり、①筋肉の収縮を防止②血流の悪化という2つの要因をシャットアウトしてくれるのです。
ミネラルバランスの乱れのほか、就寝中の発汗による水分不足、冷えなどによる血行不良もこむら返りの原因に。加齢によっても筋肉の機能は衰えますので、60歳以降は起こりやすくなります。妊娠中もミネラル不足になりがちです。
また、運動するとミネラルが急速に消費されます。そのまま運動を続けると、やがて筋肉疲労を起こし、足がつる可能性が高くなります。
とくに中高年の場合、自分では適度な運動と思っていても発汗や疲労などの影響で、予想以上のミネラルが消費されているケースが多いので注意しましょう。
病気が原因の場合も
ほかの病気が原因でこむら返りが慢性化することがあります。回数が多くて、生活に支障が出てしまう方は、重い病気が隠れていないかチェックする必要があります。
たとえば、糖尿病や脊柱管狭窄症、閉塞性動脈硬化症、椎間板ヘルニア、腎疾患、脳梗塞など。とくに糖尿病では珍しい症状ではありません。血糖値が高い状態が続くと、ミネラルバランスが乱れやすいことが原因と考えられています。
ほかの病気の場合、足のつりのほか、特徴的な症状もみられます。
糖尿病 | のどの渇き・手足のしびれ |
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脳梗塞 | 片方の手足の麻痺・言葉のもつれ |
腎疾患 | むくみ |
椎間板ヘルニア | 腰痛 |
脊柱管狭窄症、 閉塞性動脈硬化症 |
休みながらでないと歩けないなどの歩行障害 |
これらの病気は検査で発見が可能なので、気になったら早めに病院に行きましょう。
若い世代の場合、足のつりはサッカーなど足を激しく使う運動中に起こりやすく、筋肉疲労が原因の1つと考えられています。ところが中高年になると、ウォーキングやジョギングなどの軽い運動時や睡眠中に足がつるといったケースが増えてきます。
なぜ中高年になると慢性化したり、重症化したりするのでしょうか。
足の筋肉は伸縮することで、ポンプのように血液を循環させる働きをしています。しかし、定期的に運動をしていないと、筋肉量は20歳代をピークに、10歳年齢を重ねるごとに約10%ずつ低下していきます。例えば、60歳代では20歳代の約60%になってしまいます。
足の筋肉量が減ると、下半身の血流が悪くなり、ミネラルやビタミンなどの栄養補給もうまくいかなくなるため、なにげない家事や仕事などの日常活動で筋肉疲労が蓄積してしまうのです。
また、動脈硬化による血行不良や冷え、神経障害、薬の副作用など、さまざまな要因が重なりやすくなるのも中年期以降の原因と考えられています。
こむら返りは突然やってきます。特に睡眠中は眠気と激痛で早く治したいと焦るでしょう。ただし、症状としては筋肉が収縮しているだけなので、落ち着いてこわばりをほぐすことが大切です。
ただし、無理やり一気に伸ばすと筋肉が損傷し、肉離れを起こすことがあります。「慎重にゆっくりを心がけましょう。
こむら返り予防の基本は、規則正しい生活、バランスの良い食生活、適度な運動および運動後のストレッチ、ミネラルの入った水分の積極的な補給、などがあげられます。
また、仰向けで重い掛け布団を使うと足首の関節が伸ばされ、こむら返りが起こりやすくなってしまいますので、横向きで寝る、軽い掛け布団にかえるなど、就寝時の工夫も大切です。
筋肉にたまった疲労を翌日に持ち越さないよう、就寝前など1日の終わりに足をケアしましょう。ふくらはぎに手のひらを添え、下から上へと軽く揉みます。強く揉むと筋肉を傷めやすいので、手を滑らせるようにしてやさしく。市販されている、ふくらはぎ専用のマッサージャーなども便利です。
足首を向う側へ倒したり手前に曲げたりを、ゆっくり繰り返します。寝ながらできる就寝前がおすすめです。
仕事で座りっぱなし、立ちっぱなしという人は、休憩時間などの空いた時間にふくらはぎを伸ばしておくと、夜間のこむら返り防止に役立ちます。
スクワットは足の筋肉量を維持するだけでなく、血流を良くするため疲労回復にもなります。
両足を肩幅程度に開いて立ち、両手を前に伸ばし、ゆっくりと膝の曲げ伸ばしをします。前傾姿勢で行うと腰に負担がかかるので、両手の水平を保つようにするのがポイント。1日100回程度を目安に行いましょう。一度にやりすぎて疲れがたまると逆効果なので、数回に分けてもオッケーです。
冷えは筋肉の収縮のもと。暑い季節でも、長ズボンのパジャマ、ひざ掛けの用意などを心がけたいもの。
靴下は締め付けが強いとかえって血行を悪くしてしまいます。ふんわりと包み込むような靴下をチョイスしましょう。レッグウォーマーなどもおすすめです。
入浴はシャワーですませるのではなく、湯船に入り、血行を良くしましょう。また、足裏にはたくさんのツボがあります。ツボは温めるだけで刺激になるので、足湯もおすすめ。湯上りの血行の良い時に、ふくらはぎをマッサージするのも効果的です。
重い掛け布団をかけて仰向けに寝ると、重みで足首が伸ばされた状態になります。するとふくらはぎの筋肉が縮んだままになり、こむら返りが起こりやすくなります。これを避けるため、布団は軽いものを選びましょう。横向きで寝るのも忘れずに。
ハイヒールは筋肉に負担がかかり疲労がたまってしまいます。ハイヒールを履く場合はなるべく短時間を意識して、代わりに履ける靴も持参しましょう。
睡眠中はコップ1~2杯分の汗をかくので、知らぬ間に脱水気味になっていることがままあります。就寝前に水分補給しておきましょう。ただし、飲みすぎは体を冷やし、むくみの原因にもなってしまうので逆効果。できるだけ常温か温かいものを、コップ1~2杯程度を目安に。
運動中は、スポーツドリンクなどで水分とミネラルをこまめに補給しましょう。運動前にカリウムが豊富なバナナを食べておくのも予防になります。
ミネラルが不足しないよう、バランスの良い食事を心がけることが大切です。とくに筋肉の動きに関係が深いマグネシウムやカルシウムなどを積極的に摂りましょう。
ミネラルは、筋肉や骨のもととなる、人体を構成するのに必要な栄養素です。無機質とも呼ばれています。
5大栄養素※の1つで、体の調子を整える大切な役割も果たしています。
私たちのカラダは、約96%が酸素、窒素、炭素、水素の4つの元素、残りの4%がミネラルでできています。ミネラルの必要量自体は少ないのですが、健康を保つためには必要不可欠です。体内で作ることはできませんので、食べ物や飲み物などから補う必要があります。
※タンパク質、炭水化物(糖質)、脂質、ビタミン、ミネラル
ミネラルは1日にどれくらい摂ればよいのでしょうか?摂取量の目安をご紹介します。
マグネシウム370mg | そば ゆで約4~5玉、乾燥わかめ 約30g |
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カルシウム650mg | 木綿豆腐約2丁、牛乳 約600ml |
カリウム2500mg | こんぶ 約40g、バナナ 約5~6本 |
鉄7.5mg | 納豆 4~5パック、豚レバー 約60g |
「こむら」とは、ふくらはぎのことです。古来「こぶら」と呼ばれていたものが、濁点がとれて「こむら」に変化したようです。医学用語では「有痛性筋痙攣」や「筋クランプ」と呼ばれています。「ふくらはぎ」に生じるのが多いことから「腓腹筋痙攣」とも。
健康な人でも激しい運動や長時間の立ち仕事の際に起こることがあります。
太もも、足首、土踏まず、首、肩などでも生じますが、これらも含めて「こむら返りと呼びます。
こむら返りの裏には他の病気が隠れていることがあります。脳梗塞などの恐ろしい病気の場合もありますので注意しましょう。
悩みとして多いのが就寝中のこむら返り。ずっと続く痛みはもちろんのこと、目がさえて眠れなくなり不安に襲われます。慢性化すると生活に支障がでる睡眠障害におちいってしまうこともあります。
総務省によると、日本では5人に1人が睡眠に不安を抱えており、長期間にわたる睡眠不足は健康に大きな影響をおよぼす可能性があるといいます。
睡眠時間が6時間未満になると、昼間に強い眠気を感じるようになります。こうした睡眠不足が続くと、慢性的な眠気が生じ、疲れやすさ、集中力の低下、イライラなどが起こって、日常生活に支障が出てきます。
また睡眠不足は食欲が増し、肥満の原因にもなるため、糖尿病や高血圧といった生活習慣病、ひいては動脈硬化や脳卒中の発症リスクを高めます。さらにはうつ病にもなりやすいという報告もあります。
一般的に1日7時間を目安に、プラスマイナス1時間くらいの睡眠がよいと考えられています。最近の研究では、睡眠時間が短い場合や、長すぎる場合には6年後の死亡率が高くなるという結果も報告されています。
睡眠障害はストレスにより心身ともに大きな負担を強いられます。精神的には不安にさいなまれ、肉体的にはストレスホルモンが体の随所にダメージを与えます。結果として、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、制御不能な体重増加などにおちいってしまいます。
人間の体は睡眠中に一日の疲労を回復し、ウイルスなどに対抗する準備をしています。いわゆる免疫が機能している状態です。しかし、十分な睡眠が取れないと、免疫機能の回復が間に合わないため、ウイルスなどを撃退する能力が弱まり、感染症リスクが増大します。
古い細胞を新しい細胞へと入れ替える新陳代謝は健康で若々しい肉体を作るだけでなく、昼夜を問わずカロリー消費する役割も果たしています。睡眠不足になると新陳代謝も鈍くなってしまうため、肥満リスクが高まってしまいます。
睡眠不足で疲れがたまると不機嫌になったり、イライラしたりします。他の人の感情や反応を上手く読み取れなくなることもり、コミュニケーションにも支障をおよぼします。さらに長期的な睡眠不足は、深刻な精神疾患であるうつ病のリスクが高まります。
十分な睡眠をとっていないと認知機能に障害をきたします。集中力の低下や新たな情報を覚えることが困難になるため、仕事や家事などに悪影響をおよぼします。また、反射神経が鈍くなり、突然の変化に対する反応が遅れるため、交通事故などのリスクが高まります。
人体は眠っている間に心臓をはじめとした臓器の修復、体温や糖代謝など整えているホルモンバランスの調整、免疫機能の正常化などを行っています。睡眠が足りないと、これらの仕組みがうまく機能しなくなり、ひいては心臓病や腎臓病、糖尿病や高血圧などの慢性疾患リスクが高まってしまいます。
ここまでのまとめ
1筋肉が過剰に収縮
2 血流が悪化
⇒こむら返り発生!
毎日続けて摂ることが大切なので、効率的な摂取にはサプリメントなども検討しましょう
体に不可欠な16種類の必須ミネラルのうちの1つ。5~6割が骨に貯蔵されており、残りの4割は筋肉や脳、神経に存在しています。300種類以上の酵素を活性化して、神経の興奮を抑える、エネルギーの生成をサポートするなど、生命維持に必要な代謝を支えています。
また、筋肉の制御や血流促進、血圧・血糖値・体温の調整などの働きも担っています。
近年、食事の西洋化が進んだことで、高カロリーな食生活が習慣化しているケースが多くみられます。また、栄養の偏りは体のさまざまな箇所に不調をもたらします。
現代人はミネラル不足といわれ、なかでもマグネシウムの欠乏は、思っている以上に深刻です。カルシウム不足を自覚している人は多くいますが、マグネシウム不足については、あまり浸透していないのも問題。
実際に平成27年国民健康・栄養調査におけるマグネシウムの1日の摂取量の平均は243.9㎎で、推奨量と比較すると不足気味です。
食べ物から摂ったマグネシウムは、おもに骨に貯蔵されます。体が不足したなと感じると、骨から取り出して、マグネシウムの量を一定に保とうとします。この働きはカルシウムと同じですが、マグネシウムは骨から取り出す働きがカルシウムより弱いという特徴があります。
そのため、マグネシウムは積極的に摂っていかないと、すぐに不足してしまうのです。
こむら返りが頻繁に起こる人はマグネシウム不足の可能性が高いといえます。慢性的にマグネシウムが不足すると、筋肉のけいれんによってさまざまな症状があらわれます。そのまま放置しておくと、やがて心臓病、脳卒中、高血圧、神経炎、糖尿病などの病気につながってしまいます。
マグネシウムが不足すると…
・体がだるい
・疲れやすい
・眠れない
・不整脈が起こる
・食欲の低下
・記憶障害
マグネシウムを選ぶ際は“水溶性”がポイント。その名のとおり「水に溶けやすい」ので、腸が吸収しやすいという特長があり、効率的にマグネシウムを摂取できます。実際に国の基準に則った栄養機能食品としても認められています。
足のつりやすい人に、マグネシウムを12週間摂取してもらったところ、約78%(46人中36人)の人が「夜中に足がつる症状が改善した」と答えた。
出典:Med Sci Monit,2002;8(5):CR326-330より作図
上記と同じ試験で、夜中に足がつった回数を計測。マグネシウムを飲んだ人は、飲み始めて1~2週間で平均回数が激減。その後、6週目で処方の変更を実施。それまでマグネシウムを飲んでいた人に対象薬(マグネシウムが含まれていない比較用の薬)を飲んでもらったところ、逆に回数が増加。マグネシウム摂取により、こむら返りを予防できることが示唆された。
出典:Med Sci Monit,2002;8(5):CR326-330
ここまでにご紹介した「水溶性マグネシウム」について、おさらいします。
⇒筋肉の健康を保ち、こむら返りを抑える